Structure領域

経カテーテル的大動脈弁置換術

TAVR

2013年10月に本邦で保険適用された経カテーテル的大動脈弁置換術(Transcatheter aortic valve replacement::TAVR)は,すでに高齢者や開胸術高リスク大動脈弁狭窄症(Aortic valve stenosis:AS)患者に対してなくてはならないものになっている。最近は手術リスクが低い患者に対しても開胸術と比べて臨床成績が同等以上であることが証明され適応がますます拡大している。現在では開胸術後症例や透析患者に対するTAVRも保険診療として行われている。当院における手術数も年々増加傾向である(図)

経皮的僧帽弁接合不全修復術

TMVr

2018年4月から本邦で治療が開始された経皮的僧帽弁接合不全修復術(Transcatheter mitral valve repair : TMVr)は僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対するカテーテル治療である。総大腿静脈よりアプローチを行い,心房中隔を経由して左心房へアクセス後にMitraClip®を用いて僧帽弁前尖と後尖を把持し逆流を制御する。心停止や開胸の必要がなく極めて低侵襲に僧帽弁逆流の制御が可能となり,機能性および変性性MRに対して適応がある。TMVrは手術が躊躇われる変性性MRに対する非常に有効な治療手段であり重要な治療オプションになり得る。機能性MRに対しては外科的な介入における有効なエビデンスに乏しいためTMVrの適応はより拡大されていくと思われる。

経皮的左心耳閉鎖術

非弁膜症例心房細動患者は心原性脳塞栓予防のため抗凝固薬を内服する必要がある。しかしながら,出血リスクを高めることになり重篤な合併症が生じ得る。塞栓源はその9割が左心耳に出来るため,Watchmanディバイスを用いて経カテーテル的に閉鎖する治療法が経皮的左心耳閉鎖術である。出血ハイリスク患者に行い抗凝固療法を中止することが目的であり,心房細動患者に対する強力な治療オプションになり得る。

 

 TAVRやTMVrでこれまで治療をあきらめざるを得なかった症例が独歩退院していくのを見て隔世の感がある。心臓弁膜症治療を低侵襲に行うメリットは大きく,今後も発展していく分野であろう。当院ではこういった治療症例は例外なく多職種(循環器内科,心臓血管外科,看護師,リハビリテーションスタッフ,放射線技師,医療工学士等)からなるハートカンファレンスで適応が議論される。本邦は世界でも稀な超高齢者社会に突入しておりこういった低侵襲治療の恩恵をうける患者も多くその適応を的確に判断し発展させる必要がある。

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