常染色体優性多発性嚢胞腎・難病申請
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は遺伝に伴う腎臓病で、腎臓や肝臓に無数の嚢胞と呼ばれる液体が貯留した袋が形成されることにより、正常な組織が圧迫される結果、腎臓の機能が徐々に低下する疾患です。半分の割合で親から子に伝わるため(中には突然変異で発症する方もおられます)、遺伝病の中では頻度の高い疾患です。
ADPKDの患者さんの約半数が生涯のうちに透析に至ると考えられています。しかし近年トルバプタン(商品名 サムスカ)という薬剤が、嚢胞の増大の抑制、腎機能を維持する効果があることがわかり、透析に至る危険性が高い患者さんにはその投与が保険で認められています。
またADPKDの患者さんでは頻度は低いものの脳動脈瘤や心臓弁膜症を合併される方がおられます。ADPKDと診断された場合には定期的にこれらの疾患の有無を調べておく必要があります。
当科ではADPKDの患者さんに対するトルバプタンの導入を積極的に行っております。ADPKDは国から難病に指定されており、透析に至る可能性が高い患者さんはその認定を受けることができ、様々な助成が受けられます(後述)。トルバプタンの開始前に難病の申請を行い、開始時には3泊4日の入院が必要となります。その後は毎月、副作用の確認のために外来を受診していただきます。
指定難病の申請に関して
病気には原因がおおよそ分かっており、いろいろな治療法や薬が開発されているものもあります。しかし一方で、原因が分からない、症例が少ないなどのために治療法が確立していない病気もあります。指定難病は、①発病の機構が明らかでなく、②治療方法が確立していない、③希少な疾患であって、④長期の療養を必要とする疾患で、⑤患者数が一定の人数を超えず、⑥客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立している、などの条件をもとに選定されています。
指定難病に認定されると、
- 指定難病の医療費の自己負担割合が従来の3割から2割に引き下げられる
- 所得に応じて、医療費の自己負担上限額(月額)が設定される
などのメリットがあります。
一方で、指定難病の診断を受けていても、一定の重症度にある患者さんでないと「認定」されず、公費助成を受けられない場合もあります。
指定難病の申請に関するおおまかな流れは以下のようになります。
- 難病指定医を受診し、診断書(臨床調査票個人票)の交付を受ける。
- 診断書と必要書類を合わせて、都道府県窓口に医療費助成の申請をする。
↓
- 都道府県で審査を行う。
↓
- 認定された場合、都道府県から医療受給者証が交付される。
↓
- 指定医療機関を受診し、治療を継続する。
尚、医療受給証は約1年毎に更新の申請が必要となります。
(詳しくは、お住まいの都道府県の窓口にお問い合わせください。)
難病に対する医療費助成の制度改正により、平成27年度から医療費助成の対象となる指定難病の対象が拡大されました。これまで医療費助成を受けられなかった病気の方も、受けられるようになる場合があります。
腎臓内科で関係する疾患も、新たに対象となった疾患がありますので、担当医へご相談ください。
腎臓内科で関係することが多い疾患は以下のようなものがあります。
- IgA腎症
- 紫斑病性腎炎
- 一次性ネフローゼ症候群
- 一次性膜性増殖性糸球体腎炎
- 急速進行性糸球体腎炎
- 抗糸球体基底膜腎炎
- 顕微鏡的多発血管炎
- IgG4関連疾患
- 多発性嚢胞腎
- アルポート症候群
など。