末梢血管・下肢再生治療領域

末梢血管治療について
(下肢閉塞性動脈疾患と包括的高度慢性下肢虚血について)

下肢閉塞性動脈疾患:LEADとは

・ LEADって何ですか?
 
血液中の脂質が血管内に蓄積すること(動脈硬化)で, 下肢血管内に狭窄や閉塞をひき起こし, 下肢先への血流が低下していきます。加齢とともに進行する疾患ですが, 糖尿病や喫煙などの疾患を有していると, 動脈硬化のリスクが増大し, 若年の方でも発症する可能性があります

LEADの症状としては, 冷感やしびれ, 跛行(歩行時にふくらはぎに痛みを生じ, 休み休みでないと歩けなくなる症状)が出現します。進行すると, 安静時にも痛みが出現し, さらに重症化すると下肢に潰瘍や壊疽を引き起こす疾患です。

 

・ LEADを放置するとどうなりますか?
 
この疾患の10年後の生存率は約50%程度で, さらに重症化して潰瘍や壊疽を発症する(包括的高度慢性下肢虚血)とより予後が悪くなります。また, 安静時疼痛や潰瘍・壊疽を発症すると肢切断に至るリスクも高くなり, 一般的な治療を行っても1年後には約30%程度で切断が必要になると報告されています。今後高齢化が進むことでこの疾患に罹患するリスクも高くなるため, 早期に診断し, 適切な治療を受けていただくことをお勧めいたします。
また, この疾患は動脈硬化が原因で発症することが多いため, 冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)又は脳血疾患(脳梗塞や頸動脈狭窄)を併発する可能性が非常に高いことが報告されています。LEADと診断された場合は, このような心臓や脳の評価を行うことも予後を改善させるために重要となります。
糖尿病による神経障害や整形外科的疾患(ヘルニアや脊柱管狭窄症)を有している場合は, LEADがあっても典型的な症状がでにくい場合があります。無症状の方でもリスクファクター(高血圧, 糖尿病, 高コレステロール血症, 喫煙歴)を持つ65歳以上の方は簡単なスクリーニング検査を受けていただくことをお勧めいたします。

 

・ どのような検査方法があるのでしょうか?
 
自覚症状などからLEADが疑われる場合は, 以下のような検査を行い診断を進めていきます。各症例に応じ負担の少ない検査から提案していきますので, 外来にて相談してまいります。

  1. 足関節上腕血圧比(ABI): 両側の腕と足首に血圧計を巻いて同時に血圧を測定する検査です。
  2. 下肢動脈エコー検査:超音波で下肢血管の狭窄や閉塞を評価する検査です。
  3. 下肢造影CT検査:造影剤を使用して, 血管の形態や狭窄・閉塞の場所を正確に評価する検査です。
  4. 下肢MRI:造影剤の使用が難しい症例では, MRIで評価することが可能です。
  5. 血管造影検査:カテーテルを動脈に挿入し, 造影剤を用いて下肢血管を撮影する検査です。

CTやMRIよりもより正確に血管形態や狭窄度を評価することが可能で, 引き続き治療を行うことが可能です。

 

下肢造影CT検査

血管造影検査

LEADに対する治療方法

 

・ まず最初に行うべきことは?
 
LEADへの治療はまず, 生活習慣の改善や運動療法が重要です。禁煙や食事管理を行い, リスクファクター(高血圧, 糖尿病, 高コレステロール血症)の改善を目指します。運動療法も跛行を自覚症状とする症例に対しては非常に有効です。

  1. 禁煙や食事管理(脂質, 糖分, 塩分を減らすこと)
  2. 薬物治療(血をサラサラにする薬, コレステロールを下げる薬, 血管を拡張させる薬)
  3. 運動療法(間欠性跛行症状の場合は, 週3回30分以内の運動療法が推奨されています)

 

・ それでも症状が改善しない場合の治療は?
 
上記治療方法でも症状の改善を認めない場合は, 下肢の血流を回復させる治療方針を検討します。血流を回復させる治療法にはカテーテルで血管を拡張させる治療法と外科的な治療法があります。血管の形態や閉塞の程度(閉塞距離や閉塞場所)に応じ, 治療方法を検討します。

  1. 経皮的下肢血管形成術:カテーテル(風船や金属製のステント)を使って血管を拡張させる治療です。
  2. 下肢血管バイパス術:狭窄や閉塞している血管の先に新たな血管をつなぎ, 血流の迂回路を作る治療です。
  3. 坐骨神経ブロック:安静時疼痛が強い場合は, 背中や膝から麻酔薬を注射する神経ブロックがあります。

 

・ カテーテルを用いた治療ってどのような治療ですか?
 
多くは足の付け根の動脈(場合によっては腕や手首の動脈)から細い管状のカテーテルを挿入し, 狭窄や閉塞している血管にワイヤーを通過させます。そのワイヤーにそって風船(バルーン)やステントを進め, 病変部位で拡張を行います。所要時間は1時間~1時間半程度で, 風船やステント拡張後は良好な血流が回復します。全ての治療は局所麻酔下で行いますので, 患者さんへの負担は非常に少ないです。足の付け根から治療を行った場合も術翌日には歩いて退院することが可能ですのでご安心ください。治療後しばらくは血をサラサラにする薬(抗血小板剤)の服用が必要になりますが, 外来主治医と相談しながら外来にて継続や終了の相談をしていきます。 

治療前

バルーン拡張

治療後

膝上の血管で閉塞しており, バルーンで拡張後良好な血流を得ています。

 

・ カテーテル治療の成績は?
 
腸骨動脈領域(へそ付近から足の付け根までの動脈)では, 主にステント治療を行います。金属製のステントを留置する方法と, 膜で覆われたカバードステントで拡張する方法があります。病変の形態(石灰化の程度や病変部位など)に応じ, どちらのステントを使用するか決定しますが, どちらもステント留置後の開存率は9割以上と良好です。浅大腿動脈領域(足の付け根から膝上付近までの動脈)では, ステント治療又はバルーン治療を行います。ステントやバルーンには再狭窄を予防するための薬が塗付(薬剤溶出性ステントやバルーン)されたものもあり, 開存率は8割以上と報告されています。ただし, 閉塞長などの病変形態や石灰化の程度に応じ, 外科的バイパス術が推奨される症例もあり, 当院心臓血管外科とも相談の上, 適切な治療方針を提案してまいります。

包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)とは

・ CLTIってどんな病気ですか?
 
包括的高度慢性下肢虚血(Chronic Limb-Threatening Ischemia; CLTI)とは, 動脈硬化や血管の老化が原因で末梢動脈の血流が著明に低下し, 四肢に安静時疼痛や壊疽・潰瘍を呈する病気です。生活習慣病や加齢, 慢性維持透析を要する患者でリスクが高くなる下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)が主な原因で発症します。CLTIは1年間で約30%の症例で肢切断に至り, 生活の質の低下(就業困難, 運動機能の低下など)を招きます。また, 脳梗塞や心筋梗塞等の心血管疾患や致死的な創部感染を併発することが多く, 5年間の生存率は50%と極めて予後が悪い疾患です。CLTIは毎年2。8万人が発症しており, 高齢化社会を反映してLEADに伴うCLTI患者が急増して来ることが予想されています。しかし, CLTIは標準治療である経皮的血管形成術や外科的バイパス術による血流を回復させる治療等に難治性となることもあり, また施行しても十分な組織への潅流が得られず肢切断に至る症例が多いことも報告されています。 
このような症状が出現した場合は, 専門的な医療機関での早急な検査や治療が必要となります。

 

・ CLTIに対する治療は?
 
CLTIに対する治療は, 循環器内科だけではなく創傷を処置し評価する皮膚科や形成外科, 整形外科との集学的な治療が必要となります。

 

治療前

治療後

カテーテル治療によって, 指先や踵にいく血流が回復

 

CLTIに対する主な治療の流れ


 

CLTIへの治療はまず感染を起こさないように適切な創部の処置や抗生物質の投与を行い, それと並行して早期に血流を回復させる治療が必要となります。 当院では, カテーテル治療によって可能な限り末梢の血流を回復させる治療を行っています。CLTIへのカテーテル治療は膝上の比較的太い血管だけではなく, 創部へ潅流する膝下の細い血管を拡張させることも重要です。カテーテル治療が奏功すれば, 創部の治癒に期待できます。

 

・ CLTIに対する新たな治療法ってありますか?
 
CLTIに対し十分な治療を行っても症状が改善せず, 切断が必要になる難治性の症例があります。これはCLTI症例で一定の確率にて起こるものであり, 糖尿病や透析症例で多い傾向にあります。このような難治性の症例で, 切断が必要な症例に対し, 当院では血管再生治療を行うことが可能です。血管再生治療は2000年代から臨床導入され, 有効性を示す論文を多く輩出しています。現在は, 臨床研究として実施しており, 厚生労働省から認可されている施設のみで実施可能な治療となります。 
詳細については, 「包括的高度慢性下肢虚血に対する血管再生治療」のページをご確認ください。

 

・ LEADやCLTIへの治療についての相談先
 
症状にお困りの方や疑わしい症状をお持ちの方はいつでもご相談ください。また, かかりつけの病院で治療が難しいと診断された方でも, 各症例に応じた新たな治療法について相談させていただきます。 
担当医:京都府立医科大学附属病院 循環器内科 矢西 賢次(やにし けんじ)
外来日:毎週月曜日 下肢血管治療・血管再生外来 までお越しください。問い合わせ電話番号: 外来:075-251-5031 又は 循環器内科医局:075-251-5511
 
ご不明な点やお伺いがある方は電話でも対応できますので, 遠慮なくご連絡ください。

2. 包括的高度慢性下肢虚血に対する血管再生治療
(標準治療に難治性を示す症例に対する新たな治療について)

– 包括的高度慢性下肢虚血の概要 –

包括的高度慢性下肢虚血(Chronic Limb-Threatening Ischemia; CLTI)とは, 動脈硬化や血管の老化が原因で末梢動脈の血流が著明に低下し, 四肢に安静時疼痛や壊疽・潰瘍を呈する病気です。生活習慣病や加齢, 慢性維持透析を要する患者でリスクが高くなる下肢閉塞性動脈疾患が主な原因で発症します。
CLTIは1年間で約30%の症例で肢切断に至り, 生活の質の低下(就業困難, 運動機能の低下など)を招きます。 また, 脳梗塞や心筋梗塞等の心血管疾患や致死的な創部感染を併発することが多く, 5年間の生存率は50%と極めて予後が悪い疾患です。 CLTIは毎年2.8万人が発症しており, 高齢化社会を反映して動脈硬化症に伴うCLTI患者が急増して来ることが予想されています。 しかし, CLTIは標準治療である経皮的血管形成術や外科的バイパス術による血流を回復させる治療等に難治性となることもあり, また施行しても十分な組織への潅流が得られず肢切断に至る症例が多いことも報告されています。
 
また, 動脈硬化症だけではなく, 難病であるバージャー病や女性に多い膠原病(強皮症や血管炎など)でCLTIを発症することも多く, 若年から中年にかけても発症する疾患です。

 

人口の高齢化や生活習慣様式の欧米化に伴って, 我が国の下肢閉塞性動脈疾患は, 年々増加しています。
これらの患者さんに対する治療として危険因子の除去, 運動療法, 薬物治療, 経皮的血管形成術や外科的バイパス術が行われています。 しかし、下記のような重症例や治療困難例も, 増加の一方です。
また, 依然として難病であるバージャー病や膠原病に伴う包括的高度慢性下肢虚血の患者さんも多くおられます

1. 重症の血流低下を認める。

手や足の指が、安静時でも痛みを伴ったり, 潰瘍・壊疽などを認める。

2. 既存の治療が困難である。

血管狭窄部位が末梢血管(細い血管)のため, 手術や風船の治療ができない場合。

3. 既存の治療に抵抗性である。

一般的な治療を行っても疼痛や潰瘍・壊疽が改善せず(または悪化)切断が必要である。
カテーテル治療やバイパス手術を行っても血管の再狭窄を繰り返す。

– 自家骨髄単核球細胞を用いた血管再生治療 –

人間の骨の中(骨髄)には、血管内皮細胞や平滑筋細胞などの心血管系構成細胞の幹細胞が含まれ, この骨髄に存在する幹細胞を用いた血管再生が循環器医療に応用されています。 骨髄単核球の虚血下肢治療への有効性の基礎研究・臨床研究をもとに, 私どもは他施設共同研究で, 115例の患者さんの3年間にわたる有効性, 安全性, 長期予後を報告しています。他に治療法がないと紹介された患者さんのうち下肢閉塞性動脈疾患で6~7割, バージャー病で9割の方が, 効果(治療後疼痛の軽快~消失, 潰瘍の軽快~消失, 歩行距離の延長)を認めています (Matoba S, et al. Am Heart J. 2008:156:1010-1018)。 これらの結果をもとにより多くの患者さんに安全で効果のある患者さん自身の骨髄細胞を用いて, 従来治療に抵抗性で, 潰瘍を伴うような包括的高度慢性下肢虚血の症例に対し血管再生(血管新生)治療を行ってまいりました。

自分の細胞を使うため拒絶反応がないこと, 細胞をそのまま使うため安全である事が最大の特徴です。 
具体的には、下肢血管に対する従来の内科的外科的治療に抵抗性の患者さん(図1)に対して, 適応基準(図2)を満たす場合, 骨髄から細胞を採取精製し, 虚血部位に筋肉注射にて細胞を移植するものです。
最近の循環器系の再生治療は目覚ましく進歩し, 多くの患者様の生活の質も量も向上したといえます。 しかし, いまだ未解決な重症虚血疾患で困っている患者さんが多いことも現実です。 安全性と効果の結果に基づいた先進的医療を実践する事こそ私達の使命だと考えております。

– 自家骨髄単核球細胞を用いた血管再生治療の対象基準 –

図1. CLTIの一般的な治療方針

血行再建術適応がない(又は治療困難な)症例
又は治療に難治性の症例が対象となります。

図2. 再生治療の対象となる症例基準

– 自家骨髄単核球細胞を用いた血管再生治療について –

手術は全身麻酔で実施します。
事前に, 全身麻酔が可能かどうかの検査(心機能評価, 呼吸機能評価など)を行います。
 
自家骨髄単核球細胞を用いた血管再生治療の流れ(図3と4参照)
 
まず, 患者さんのお尻の骨(腸骨)から骨髄液を600ml程度採取します(図3 A)。
 
続いて, 採取した骨髄液を濃縮し, 血管新生を促す骨髄単核球細胞成分を分離します(図3 B)。
 
約60~80mlに濃縮された細胞を患側の下腿以下足趾まで血流が低下している部分に筋肉注射を行い,  
細胞を移植していきます(図3 C&D)。
 
術後は, 翌日から歩行可能で患者さんに見合ったリハビリを行っていきます。
入院期間は約7~10日程度となっています (図4)
 
退院後も可能な範囲でリハビリを継続いただき, 創部の処置や疼痛のコントロールを行っていきます。

 

図3. 血管再生治療の手術

図4. 血管再生治療の流れと経過

A. 血管再生治療後6ヵ月の血管造影
新生血管の増生がみられ, 末梢血流が改善している。

– 自家骨髄単核球細胞を用いた血管再生治療の安全性と有効性 –

基礎研究成果を基盤として行われた「自家骨髄単核球細胞移植による末梢閉塞性動脈疾患患者の血管新生治療に関する多施設臨床試験」(TACT 研究)においては, Fontaine 分類Ⅲ度以上で既存の治療に抵抗する包括的高度慢性下肢虚血に対し安全性と有効性が検討されました。 登録施設 11施設, 登録患者数115症例(下肢閉塞性動脈疾患:74例, バージャー病群:41例)において血管再生治療の有効性と安全性が報告され, 全生存率は追跡期間3年間で下肢閉塞性動脈疾患群が80%(バージャー病群が100%), 下肢切断回避率は追跡期間3年間で下肢閉塞性動脈疾患群は60%(バージャー病群で91%)でした。 また, 治療後2年間における下肢切断以外の重篤な有害事象の発生数は下肢閉塞性動脈疾患群で19件(バージャー病群で1件)でした。

この結果から, 本治療法は他の治療による血行再建の適応がなく下肢切断を余儀なくされていた症例に対する効果としては目覚ましい治療であるといえます。 また有効性においては, 疼痛視覚的アナログスケール(Visual analog scale; VAS)の改善や潰瘍径の縮小, 歩行可能距離の延長などが半年以内に有意に両群においてみられ, 血管再生治療の有効性が報告されました(図5)。

– 自家骨髄単核球細胞を用いた血管再生治療の安全性と有効性 –

 

図5. 血管再生治療の有効性評価項目の改善


 

さらに長期間の追跡調査が行われ, 全体で 389症例(374患者)に施行され, 10年全生存率は下肢閉塞性動脈疾患群で47%, バージャー病群で91%, 膠原病群で68%, 10年肢切断回避率は下肢閉塞性動脈疾患群で38%, バージャー病群で81%, 膠原病群で61%でした(図6)。 またサブ解析では, 膠原病疾患患者さんにおいて, 血管再生治療6ヵ月後までに安静時疼痛レベルの改善が有意に認められました(図7)。
短期的な安全性と有効性だけではなく, 長期的にも肢切断は回避できており, 長期的に病気に苦しむことが多い包括的高度慢性下肢虚血患者に対し十分に期待しうる治療であると考えます。

 

図6. 血管再生治療の長期予後について


 

図7. 膠原病疾患に対する血管再生治療の有効性


 

– 血管再生治療をお考えの患者さんへ (強皮症) –

※ 強皮症に伴う包括的高度慢性下肢虚血虚血の患者さんへ

 

これまでの臨床研究の結果から, 強皮症に対する血管再生治療の安全性と有効性が示されました。  
今回, 本治療のさらなる有効性を評価するため, 先進医療Bとして「強皮症に対する自家骨髄単核球細胞を用いた下肢血管再生療法」の多施設共同臨床試験を行うことを, 2022年に厚生労働省より認可頂きました。 本試験に登録をいただいた患者様には, 血管再生療法費用(約30万円)は必要ですが, 入院期間中の諸費用は全て保険診療と併用可能です。 また, 血管再生治療後の入院も当院にて経過をみていくこととなります(図8)。 難治性の潰瘍や安静時の疼痛等の症状にお困りの際は, 血管再生治療の適応かの判断も含め, 詳しくは当院までご相談ください。

 

図8. 術前検査から退院までの流れ(強皮症)


 

– 血管再生治療をお考えの患者さんへ(下肢閉塞性動脈疾患, バージャー病) –

※ 下肢閉塞性動脈疾患, バージャー病に伴う包括的高度慢性下肢虚血の患者さんへ
2017年1月以降, 本血管再生療法は先進医療として施行することができなくなりました。 ただ, 本治療を必要とされる症例は多々認めており, 強皮症以外は2022年12月現在, 自費診療で対応しております。バージャー病に対する先進医療B診療は2022年9月にて一旦終了いたしましたが, 自費診療での治療は可能です。 患者数の多い下肢閉塞性動脈疾患に対しては現在先進医療Bの申請を行っており, 今後も先進医療として本血管再生治療を継続し, いづれは本治療の保険収載を目指しております。 
 
それまでは, 本治療の適応を満たし, 現在の治療では難治性の包括的高度慢性下肢虚血症例に対しては, 患者様と個々に相談を行い, ご了承を頂けましたら自費診療として本治療の提供を継続していきます。 ただし, 血管再生療法費用(約30万円)や全身麻酔費用(約18万円), 及び入院期間中の諸費用が全て自費となり, 4~5日間の入院で約80~100万円の費用が必要となります。 自費診療中は, 自己負担を軽減するため, 以下の方法で入院治療を検討しております(図9)。

 

図9. 術前検査から退院までの流れ(下肢閉塞性動脈疾患, バージャー病)


 

– 相談連絡先 –

症状にお困りの方はいつでもご相談ください。 また, かかりつけの病院で治療が難しいと診断された方でも, 各症例に応じた新たな治療法について相談させていただきます。 またご希望がございましたら, 血管再生治療についても詳細にご説明させていただきます。

 

担当医:京都府立医科大学附属病院 循環器内科 矢西 賢次(やにし けんじ)
外来日:毎週月曜日 下肢血管治療・血管再生外来 までお越しください。
問い合わせ電話番号: 外来:075-251-5031 又は 循環器内科医局:075-251-5511 
ご不明な点やお伺いがある方は電話でも対応できますので, 遠慮なくご連絡ください。

 

※ 京都府立医科大学附属病院 循環器内科への受診をご希望される場合
主治医の先生とご相談の上, 主治医の先生から地域医療連携室を通して外来受診予約をしてください。
また, 本血管再生療法の対象かどうかわからない場合, 専門機関に相談されるか, 主治医の先生から下記にご遠慮なくご相談ください。 すぐにお返事できない場合も折り返しご連絡致します。 (直接受診相談される場合、予約がないと、かなりの待ち時間が予想されるため事前のご予約をお勧めします。)

– さいごに –

包括的高度慢性下肢虚血は非常に予後の悪い疾患で, 肢切断となれば精神的にも肉体的にも苦しむこととなります。 このような難治性の患者さんに対する治療として, この血管再生治療を提供しております。 血管再生治療後もこれまで行ってきた標準治療を継続していくことは重要であり, 感染を起こさないように留意しながら適切な創部処置を行うことが望まれます。 また, 生活習慣を正し, 危険因子(喫煙や糖尿病) をできる限り除去することも治癒を目指すために必要です。

この病気は, 我々循環器内科だけではなく, 多岐にわたる科で集学的に治療を行っていく必要があります。この病気を乗り越えるために我々も患者さんに寄り添いながら治療を検討していきます。症状にお困りの方, かかりつけの病院で治療が難しいと診断を受けた方など, ご相談がございましたらいつでも来院又は電話にてご連絡ください。

包括的高度慢性下肢虚血虚血の予後改善を目指すべく、今後も新たな治療法の探索など精進してまいります。

(以上文責:矢西)

– 参考文献 –

1. Fujioka A, Yanishi K, Shoji K, Hori Y, Kawamata H, Yukawa A, Yokota I, Teramukai S, Yamada A, Matoba S. Therapeutic Angiogenesis Using Bone Marrow-Derived Mononuclear Cell Implantation for Patients With Critical Limb-Threatening Ischemia Caused by Thromboangiitis Obliterans - Study Protocol for a Multicenter Prospective Interventional Trial. Circ Rep. 2020;2(10):630-634.
2. Shoji K, Yanishi K, Shiraishi H, Yamabata S, Yukawa A, Teramukai S, Imai K, Ito-Ihara T, Tao M, Higashi Y, Ishigami T, Fukumoto Y, Kuwahara K, Matoba S. Establishment of optimal exercise therapy using near-infrared spectroscopy monitoring of tissue muscle oxygenation after therapeutic angiogenesis for patients with critical limb ischemia: A multicenter, randomized, controlled trial. Contemp Clin Trials Commun. 2020;17:100542. doi: 10.1016/j.conctc.2020.100542.
3. Yanishi K, Shoji K, Fujioka A, Hori Y, Yukawa A, Matoba S. Impact of Therapeutic Angiogenesis Using Autologous Bone Marrow Derived Mononuclear Cell Implantation in Patients with No-option Critical Limb Ischemia. Ann Vas Dis. 2020;13(1):13-22.
4. Shoji K, Yanishi K, Yoshimi R, Hamada N, Kondo K, Fujimoto K, Nakaima H, Kuwahara K, Higashi Y, Fukumoto Y, Murohara T, Matoba S. Impact of Therapeutic Angiogenesis Using Autologous Bone Marrow Derived Mononuclear Cells Implantation in Critical Limb Ischemia With Scleroderma – Subanalysis of the Long-Term Clinical Outcomes Survey. Circ J. 2019;83(3):662-671.
5. Ono K, Yanishi K, Ariyoshi M, Kaimoto S, Uchihashi M, Shoji K, Matoba S. First-in-Man Clinical Pilot Study Showing the Safety and Efficacy of Intramuscular Injection of Basic Fibroblast Growth Factor With Atelocollagen Solution for Critical Limb Ischemia. Circ J. 2018;83(1):217-223.
6. Yanishi K, Kondo K, Hayasida R, Shintani S, Shibata R, Murotani K, Ando M, Mizuno M, Fijiwara T, Murohara T, Matoba S, TACT Follow up Study Investigators. Long-term clinical outcomes survey of bone marrow-derived cell therapy in critical limb ischemia in Ja-pan. Circ J. 2018;82:1168-1178.
7. Onodera R, Teramukai S, Tanaka S, Kojima S, Horie T, Matoba S, Murohara T, Matsubara H, Fukushima M, BMMNC Follow-Up Study Investigators, M-PBMNC Follow-Up Study Investigators. Bone marrow mononuclear cells versus G-CSF-mobilized peripheral blood mononuclear cells for treatment of lower limb ASO: pooled analysis for long-term prognosis. Bone marrow transpl. 2011;46:278-284.
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