先天性心疾患領域
成人先天性心疾患外来
生まれつきの心臓病をお持ちの患者さんが成人になり、それまで診療しておられた小児科等では対応が困難となるようなことが多くなってきております。循環器内科では「成人先天性心疾患外来」を開設し、今後急激に増加していくと予想されるこの分野の疾患に対応しています。
診療に当たっては、小児科(小児循環器内科)、小児心臓血管外科等と十分に情報を共有し、診療方針等を協議し治療を行っております。
この分野の診療には循環器内科だけではなく小児科(小児循環器内科、小児心臓血管外科)、麻酔科、産婦人科等多くの診療科が力を合わせてとりくまなければなりません。また医師だけではなく、多くの職種が患者さんをサポートする体制も必要とされます。当院は「京都府こども病院(現:小児医療センター)」を早くから開設し、多くの診療科と人材を擁する大学病院ならではの重層的な診療が可能です。
患者様へ
当院の成人先天性心疾患外来を受診の際には現在おかかりの医療機関(小児科、内科等)からご紹介を頂いて受診して下さい。
医療機関の先生方へ
現在木曜日の午後に成人先天性心疾患外来を実施しています。大変お手数ですが地域医療連携室を通じてご予約をお取り下さい。(担当 中村猛、中西直彦)
成人先天性心疾患のなかでも特に以下の領域に関しては積極的にカテーテル治療を行っております。
心房中隔欠損症のカテーテル治療
心房中隔欠損は、心臓の部屋(心房)の間の仕切り(心房中隔)に生まれつき穴があいている病気です。心臓に負担がかかるために、長年の間には動くことが辛いような症状(息切れ)、動悸などの症状がでてくることもあり、たとえ症状がなくても心臓に一定の負担がかかっている徴候があれば、健康寿命が短くなりますので治療(心房中隔欠損の閉鎖)が必要な病気です。自分がこの病気であるとは気づかず過ごしていて、大人になってから分かることも多くあります。
現在心房中隔欠損症の標準的治療は外科手術ではなくカテーテル治療です。(カテーテル治療が可能かどうかをまず検討し、不可能な場合は外科手術となります)当科では2011年より心房中隔欠損症のカテーテル治療を開始しており、多くの経験に基づいた治療が可能です。小児症例についても、小児科(小児循環器内科)及び麻酔科と協力して実施しています。
(2021年改訂版 先天性心疾患、心臓大血管の構造的疾患に対するカテーテル治療のガイドライン(日本循環器学会)から引用)
患者様へ
現在おかかりの医療機関(小児科、内科等)からご紹介を頂いて受診して下さい。
医療機関の先生方へ
心房中隔欠損症は無症状であっても予後改善目的で閉鎖が適切である場合も多くあります。ご紹介目的で事前の経食道超音波検査やカテーテル検査は一切不要です。確定診断に至らなくても疑いがあればご紹介ください。(担当:木曜日 ASD専用外来、もしくは成人先天性心疾患外来 中村猛)
成人動脈管開存症のカテーテル治療
動脈管開存症は、本来つながっていない大動脈と肺動脈の間に小さなつながりがあることから、心臓に負担がかかり、動くのが辛くなったり、命が短くなったりする病気です。
手術では体に大きな負担がかかりますが、多くの場合体に負担の少ないカテーテルでの治療が可能です。この病気は主に小児期にみつかることが多く、小児の内に治療を受けることが多い疾患です。成人で見つかった場合は小児内科と合同でカテーテル治療を行っています。
(2021年改訂版 先天性心疾患、心臓大血管の構造的疾患に対するカテーテル治療のガイドライン(日本循環器学会)から引用)
患者様へ
現在おかかりの医療機関(小児科、内科等)からご紹介を頂いて受診して下さい。
医療機関の先生方へ
現在成人動脈管開存症の標準的治療もカテーテル治療です。確定診断に至らなくても疑いがあればご紹介ください。(担当:木曜日 中村猛 中西直彦)
肺動脈弁のカテーテル治療
心臓のから肺へ血流を送る途中にある「肺動脈弁(肺に送った血液が心臓に戻ってこないように血流を一方通行にする構造)」に異常がある場合、心臓に負担がかかり、動くのが辛くなったり、命が短くなったりする可能性があります。生まれつきの心臓病で手術治療をうけても長年の間には再度肺動脈弁に異常が出てくる場合も多くあります。特に二度目以降の心臓手術は体への負担も大きくかかります。
当院では、2022年から肺動脈弁のカテーテル治療が可能になりました。
肺動脈弁、右室流出路に修復すべき異常がある場合、手術よりも体に負担の少ない治療方法として今後広がっていくことが期待される治療方法です。
(日本メドトロニック社 ホームページより引用)
患者様へ
現在おかかりの医療機関(小児科、内科等)からご紹介を頂いて受診して下さい。
医療機関の先生方へ
肺動脈弁の異常についてのご紹介も成人先天性心疾患外来へお願い致します(担当木曜日午後 中西直彦)
卵円孔開存のカテーテル治療(先天的構造が原因である脳梗塞予防のカテーテル治療)
「卵円孔開存」という心臓にスキマがあるために、その部分を血の塊が通り抜け、その血の塊が頭の血管に詰まるという脳梗塞(脳卒中)があります。不思議なことのように思いますが、実は珍しいことではありません。脳梗塞(脳卒中)を起こされた場合多くは脳神経内科などの診療科でまず治療が行われます。その後、脳梗塞の原因を調べ原因に応じた予防をすることが大事です。原因が心臓のスキマにあると分かったときはそのスキマを閉じることで脳梗塞の予防が可能です。このスキマを閉じる治療は「心房中隔欠損症」のカテーテル治療と同じ方法で実施できますので、心房中隔欠損症の治療を数多く行っております当科で治療を行っています。
(潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖の手引き 日本脳卒中学会他より引用)
患者様へ
現在おかかりの医療機関(神経内科等)からご紹介を頂いて受診して下さい。
医療機関の先生方へ
奇異性(潜因性)脳塞栓に対する卵円孔開存閉鎖術につきましてもASD専用外来もしくは先天性心疾患外来にご紹介ください(担当 木曜日 中村猛)
<医学生・研修医・循環器内科の皆様へのメッセージ>
当院は昭和57年に「京都府こども病院」(現 小児医療センター)を開設し、小児心臓疾患においても多数の治療を行っています。治療を受けた方々が成人になられ新たな問題に直面することもあります。以前であれば手術でしか治療できなかった疾患も低侵襲のカテーテル治療ができる領域がどんどん広がってきています。これからも低侵襲治療の流れが止まることはありません。成人先天性心疾患の診療は社会的必要性に比べて明らかに人材が不足しており、中でもこの分野をリードしていく医師の育成が急務です。医学生、研修医、循環器内科医の皆様、是非我々の仲間になって下さい。興味をお持ちの方は京都府立医科大学循環器腎臓内科医局(075-251-5511)までご遠慮無く御連絡ください。
(診療に関する御相談は上記電話番号では受け付けておりません)
文責 循環器内科 中村猛